悠々談談

日々思うことを、つらづらと

「この世界の片隅に」多少のネタバレありですが 改訂版

 この映画の後半は右手がキーワードだと思った。

 すずが畑で、敗戦を知ったあと号泣するがそれがピタッとやむ。そして呆然と花に目をやるシーンがある。私は、それがなぜ泣きが止むのかわからなかった。しかし、原作を読んで知った。あの時いなくなった すずの右手が彼女の頭を撫でるのだ。それで、すずが我にかえる。

 映画では右手が出てこないから唐突感がある。

 その代わりに右手が現れるのが、戦争が終わって白いご飯を食べるとき。右手を失ったすずは、スプーンで食べようとするが元気がない。そこへ右手が現れる。そしてすずの頭に手を当てる。

 なんとなく見ていると義父の円太郎かと思ってしまうが、あきらかに白く女性の手。円太郎が黒い覆いをとって食卓を照らすが、それはすずの心の闇をてらしたとも言えるのかもしれない。

   戦災孤児が終わりのとこで出てくるが、彼女は母親が右にいてくれたおかげで助かった。でも、ずっと握りしめていた母親の右手が忘れられず、すずの実際はない右手にそっと寄り添う。

 

 そして、クラウドファンディングの時、右手がりんさんの一生を振り返るが、それは、すずの右手が描く。漫画の原作では周平が大竹に上官のお供で行く時すずが見送るが、その時、

「右手、どこで何をしてるんだろう」とすずが思う。そこから映画のりんさんの一生を描き出す。 

最後に現れる。そして今のすずが、りんと寄り添い、最後に右手が観客に手をふって見送る。

 

なんと奥の深い映画よ。